☆ポイント
・市場経済における基本的な要素:価格、利潤、所有権とは何か?
・価格システムと割当て制度の比較

◎価格
 価格は財の希少性に基づいた相対的な価値という情報を人々に与える。
 例えば、ダイヤはトイレットペーパーよりも希少であるから高額であるといった具合である。
 財が希少性に応じて市場経済において価格が付けられるとき、その財を購入してもよいと考える、最大限の支払い能力のある人々にその財がわたることが保証されるような分配の仕組みを、価格システムと呼ぶ。
 言い換えれば、消費者たちがある財を買いたいと考えるとき、その希少性から消費者間で競争が行われるから、そのような場合にはもっとも多くのお金を支払える人から分配されるということである。
 また、価格の高さは消費者が財をどのように評価しているかという情報を企業に与える。

◎利潤
 企業と消費者がともに合理的であるならば、企業は価格に反応して、少ない資源で効率的に財を生産することによって利潤を増加させようとする。
 例えば、石油が値上がりしたとき、つまりは石油が何らかの理由で希少になったとき、企業は石油製品を多く生産することで、より多くの利潤を得ようとするだろう。
 このように、企業がより多くの利潤を獲得するために、価格に反応するように動機付けられることを、利潤動機と呼ぶ。
 ただし、例の場合、企業は高額で多くの石油製品を売りたいと考えるのに対し、消費者は高額では多くの石油製品を買おうとは考えないことに注意すべきである。
 このことは、後で需要と供給の項で述べる。

◎所有権
 もし、所有権がなければ、企業や家計は自らの利潤や賃金を手に入れることができないため、より多くの利益をあげようとするインセンティブを失うことになる。
 損失についても同様で、企業や家計が損失を出してしまったとき、所有権がある場合にはその損失を自らが負担する必要があるため、企業や家計には損失をできるだけ避けようとするインセンティブが働くのである。
 財の所有者が自分の好きなようにその財を使うことができるならば、財の所有者には所有権があると言い、所有者が自由に使えるような財を私有財産と呼ぶ。
 
◎割当て制度
 人々が希少な財を交換によって欲しい量だけ手に入れることができない場合、その財を割当てられたと呼び、そのような分配の制度を割当て制度と呼ぶ。
 具体的には、待ち行列やくじ引きが割当て制度にあたり、それらは価格システムに対して、支払い能力のある人々から順に財が分配されないという非効率をもたらすことになる。

☆まとめ
・価格は消費者や企業に財の希少性に基づいた情報とインセンティブを与える。
・合理的な企業はより多くの利潤を得るために、価格に応じた効率的な商品の生産を行うインセンティブをもつ。
・私有財産とそれに付随する所有権があるとき、企業と家計は利益を求め、損失を避けるインセンティブがもたらされる。
ただし、これらのインセンティブが大きくなれば、利益と業績がより密接に結びつくことによる不平等が大きくなる。
 この関係はインセンティブ・平等のトレードオフと呼ばれる。
・価格システムは財を分配する1つの方法であるが、他の方法には割当て制度が存在する。

☆ポイント
・実証経済学と規範経済学とは何か?
・基本的競争モデルとは何か?

◎実証経済学
 現実に起こっている経済の変化や政策について、その結果から物価などの量的な変化を述べたり、政策などの効果を予測するためのモデルを組み立てようとするのが実証経済学である。

◎規範経済学
 ある経済の状態に対して政策などの行動を実行するとき、それがどれほど望ましいかを判断するのが規範経済学である。
 つまりは、その政策などが及ぼす影響のメリットやデメリットを比較検討し、それを行うべきかどうかを実証的な予測に基づいて判断することを規範的という。

◎基本的競争モデル
 基本的競争モデルというのは、消費者は合理的に自分の利益を最大化する選択を行い、企業は合理的に利潤極大化を図り、さらに市場においてはそれぞれの消費者や企業が市場価格を受け入れる行動を取るようなモデルである。
→具体的には、
・合理的な消費者:消費者が常に自分たちの利益を最大にするような選択を行うと仮定するとき、そのような消費者を合理的であるという。
・合理的な企業:企業の場合も消費者と同様に、常に自分たちの利益(利潤)を最大にするような選択(営業)を行うと仮定するとき、そのような企業を合理的であるという。
・市場価格と価格受容者(プライス・テイカー):合理的な企業が自分たちの利潤を最大化しようと考えるとき、商品の値段を他社よりも引き上げることを考えるが、合理的な消費者も自分たちの利益を最大化しようと考えることから、他社よりも高額な商品を購入することはないため、結局のところそれぞれの企業は与えられた市場価格と同一の値段で売ることになる。
 一方、合理的な消費者が自分たちの利益を最大化しようと考えるとき、商品を他者よりも安く購入することを考えるが、合理的な企業も自分たちの利益を最大化しようと考えることから、現行価格よりも安く商品が売られることはなく、結局のところそれぞれの消費者は与えられた市場価格と同一の値段で買うことになる。
 このように、与えられた市場価格を受け入れるしかないような買い手や売り手を価格受容者(プライステイカー)と呼び、市場参加者が市場価格に影響を与えることができない状態を完全競争と呼ぶ。

☆まとめ
・実証経済学では、経済の状態から経済をモデル化し、規範経済学では、その予測に基づいてできる限り望ましい選択を判断する。
・基本的競争モデルは、合理的に自分たちの利益を最大化するように選択する個人と企業から成り、それらは完全競争市場において価格受容者的な行動を取る。

☆ポイント
・生産物市場、労働市場、資本市場とは何か?
・ミクロ経済学、マクロ経済学とは何か?
・経済学における変数とモデルとは何か?

◎生産物市場
 企業がある財やサービス、つまりは生産物を個人(家計)に対して販売するとき、その市場を生産物市場と呼ぶ。
 また、企業が作った生産物を、他の企業の生産物の材料(生産材料、投入物)として販売するとき、例えば自動車部品会社が別の自動車会社に部品を販売するような場合も、生産物市場と呼ばれる。
 生産物市場において、家計は消費者になる。

◎労働市場
 企業が生産物をつくるための、労働サービスや機械を購入するとき、その市場を労働市場と呼ぶ。
 労働市場において、家計は労働者となる。

◎資本市場
 企業が生産物を作るための資金など、つまりは投入物を調達するとき、その市場を資本市場と呼ぶ。
 例として、企業が資金調達を行うのは、主に銀行からであるから、家計は銀行に預金するなどの形で介入することになる。
 資本市場において、家計は投資者となる。

◎ミクロ経済学
 ミクロ経済学が注目する対象は、企業、家計、個人といった、経済の構成要素たちそれぞれである。
 ミクロ経済学的な問題とは、それぞれの経済主体たちの選択そのものである。

◎マクロ経済学
 マクロ経済学が注目する対象は、経済の構成要素の集合体、つまりは経済全体の動きである。
 マクロ経済学的な問題とは、社会全体の経済成長や、為替レート、物価水準といった広い問題である。

◎経済における変数とモデル
 経済学が科学であるからには、何かを計測し、それを元に論理的に推論し、理論やモデルを作ることができるということである。
 経済学で計測するもの、つまり変数とは、物の価格、賃金、労働者数、利子率など全てである。
 計測した変数それぞれが相関関係や因果関係を持ち、互いに影響しあうと考えたとき、経済全体の性質を推論することができる。
 そして、何かの変数を動かしたとき、別の変数はどれだけ動くといったことが体系的に推論できるとき、それを経済学的なモデルと呼ぶことができる。

☆まとめ
・経済における主要な3つの市場として、生産物市場、労働市場、資本市場が存在し、個人や家計はそれらについて、消費者、労働者、投資者として関わっている。
・ミクロ経済学が注目するものは経済の構成要素であり、マクロ経済学が注目する対象はその構成要素の全体であり。
→つまり、ミクロ経済学とマクロ経済学は同じものを別の視点から眺めているのである。
・経済学においては、経済の要素を変数として計測し、それを元に仮説を立て、理論化やモデル化することできる。

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