☆ポイント
・税の原則とは何か?
・課税が市場に及ぼす影響とは何か?

◎税の原則
 税について議論するにあたってまず重要なことは、良い税制とは何かを共通の認識としておくことである。
 今回は、アダム・スミスの租税4原則と、スティグリッツの掲げる5つの原則を紹介する。
 特に日本の内閣府の税制調査会では、これらを「公平・中立・簡素」の3原則としており、この3つは次の原則でも共通している。

→アダム・スミスの4原則

1. 公平の原則:個々人の能力に比例すべきこと、すなわち国家の保護の下に享受する利益に比例すべきこと。
2. 明確の原則:恣意的でなく、支払い時期、方法、金額が明白かつ平易であること。
3. 便宜の原則:徴収は納税者にとって最も納税しやすい時期と方法によってなされること。
4. 最少徴税費の原則:徴税にかかる費用をできる限り少なくすること。

→スティグリッツの5原則

1. 公平性の原則:中でも、同じような状況の者には同額の課税をするべきだという水平的平等と、支払い能力の高い者にほど多くの課税をするべきだという垂直的平等という、2つの平等原則を挙げている。
2. 効率性の原則:経済の効率性を損なわないため、納税者の費用を最少にすること。
3. 簡素性の原則:維持や手続きの手間や費用を最少にすること。
4. 柔軟性の原則:経済状況に応じた税率の変更が容易いこと。
5. 透明性の原則:税金が何に使われているかが明確なこと。

 税がある主体に課されたとき、税を課された主体の最終的な税負担を帰着、最終的な税負担を別の主体が行うことを転嫁と呼ぶ。
 ほぼ全てが転嫁される税を間接税(消費税など)、転嫁がほぼ起こらない税を直接税(所得税など)と呼ぶように単純化されるのが一般的だが、実際のところ税の全てが転嫁される、あるいは全く転嫁が起きないというケースは稀である。

◎税制調査会の答申

 例として、税制調査会の答申からいくつかピックアップしてみよう。
 次のページの「経済社会の構造変化を踏まえた令和時代の税制のあり方」(令和元年9月26日)というPDFを参照する。

 まず、「人口減少・少子高齢化への対応策」として、消費税の増税が挙げられている。
 一般にこの消費税を原則の観点から解釈すると、同じ消費に対して同じだけの税を課すことから、水平的平等は満たしていると言われるが、所得に応じた税負担ではないことから、垂直的平等は満たしていないと言われる。
 消費税が垂直的平等を達成しようとするための取り組みとして、国内では軽減税率について議論がなされているが、税率の違いから消費者の選択に歪みをもたらし、個別の税率設定が煩雑になることから、中立性や簡素性には反した仕組みである。
 実際の答申書では、"消費税は、世代や就労の状況にかかわらず、消費の水準に応じて、国民が幅広く負担を分かち合う。所得に対して逆進的であるとの指摘がある一方、投資や生産、勤労意欲に対する影響や景気による税収の変動が相対的に小さい。" としている。
 つまりは、就労人口の減少に伴う勤労世代の負担の増加を、国民に幅広く負担させることで軽減しようという考え方である。
 また、「企業年金・個人年金等に関する公平な税制の構築」では、"人生100年時代において、働き方やライフコースが多様化しており、全世代型社会保障の構築と合わせて、一人ひとりの個人が老後の生活に備えるための準備を公平に支援するための税制の構築が求められている。" としており、3原則の中でも特に公平性を重視した議論が行われていることがわかる。
 「デジタル時代における納税環境の整備と適正・公平な課税の実現」の項では、"ICTの活用により、納税者の利便性の更なる向上やコンプライアンスコストの最小化を図りつつ、同時に取引や申告の段階から正確な手続を行うことができるような仕組みを構築することを目指すべきである。" のように手続きの簡素化も課題とされているが、利便性の低さからマイナンバーの普及が進んでいないという事実がある。

◎課税と市場
 市場に対して税というシステムが介入するとき、重要になるのは誰がどれだけ支払うかということである。
 税を課されるのが消費者であれば、元の市場価格に税分を上乗せした価格が実際の負担金額であり、これを消費者価格と呼ぶ。
 一方、税を課されるのが生産者であれば、元の市場価格から税分を差し引いた価格が実際の収入であり、これを生産者価格と呼ぶ。
 実際の市場で税が課されると、税が課されない場合では市場価格によって需要量と供給量が変化していたものが、この消費者価格と生産者価格に応じて需要量と供給量が変化するという影響がもたらされる。
 このことについては、需要・供給曲線の項で、需要量や供給量の変化と関連して詳しく述べる。

☆まとめ
・公平性・中立性・簡素性が租税原則の大きな枠組みとなっている。
・実際の税の課される市場においては、消費者価格と生産者価格が需要量と供給量を決める。